事例&レポート
専門人材はどう経営視点を広げるのか|コニカミノルタ 成毛氏、BBT経営塾の1年間
コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタ株式会社は、材料をはじめとする技術領域を基盤に、幅広い事業を展開しています。その中で技術開発本部は、将来の事業創出や既存事業の課題解決につながる技術開発を担っています。今回は、コア技術の一つである「材料」の領域を担うマテリアルサイエンス部 部長の成毛氏に、BBT経営塾での1年間と、仕事を見る視点の変化について伺いました。
専門領域で経験を積み、現場で成果を上げてきた人材が、次の経営を担う立場へ進むとき、何が変わるのでしょうか。
成毛氏は、入社以来20年以上にわたり、開発領域でキャリアを築いてきた技術者です。
BBT経営塾受講期間中に課長から部長へ昇格。特定の技術を率いる立場から、「材料」というコア技術全体を見る立場へと役割が広がりました。
今回の派遣にあたっては、早期に経営幹部へ抜擢するポテンシャルを持ち、経営幹部を担う気概のある30代後半から40代前半の管理職を対象に選抜を行い、各事業部トップと人事部が協議のうえ派遣者を決定しました。
人事の戸田氏によると、成毛氏には、20年以上にわたり開発系部署でキャリアを積んできたことを踏まえ、経営幹部候補として新たな視野や視点に触れる機会を持ってほしいという期待があったといいます。
技術者として専門性を磨いてきた成毛氏は、この1年間をどのように経験し、仕事を見る視点をどう変えていったのでしょうか。
専門領域の外に出て、異業種の人たちと「経営」を考える
――受講を始めた当初、異業種・異職種の方々と経営について考える環境を、どのように感じていましたか。
成毛氏:
技術の分野では社外との接点が多く、社内だけに閉じていたという感覚はありませんでした。
ただ、それまでの社外とのつながりは、あくまで技術を軸にしたものです。経営塾では、業界も職種も異なる人たちと、経営を題材に1年間議論していきます。技術出身ではない方も多く、これまでとは違う環境でした。
受講当初は、ほかの参加者がどのように考えているのか、自分の考えがどのように受け止められるのかを意識することも多かったと思います。ただ、議論を重ねるうちに、少しずつ見え方が変わっていきました。
ほかの受講生は、私と同じように責任のあるポジションに就いていたり、私以上に重い責任を担っていたりします。それでも、それぞれに課題を抱え、悩みながら仕事をしている。その点では、立場や業界が違っても同じなのだと感じるようになりました。
BBT経営塾では、1クラス50から60名の異業種の受講者が、オンラインの学習プラットフォーム「AirCampus®(エアキャンパス)」上で継続的に議論します。受講者が互いの発言を確認しながら、自分の考えを深めていくことができます。
「正解を探す」ことから、自分で考え、判断することへ
――そうした環境で学ぶ中で、ご自身の考え方にはどのような変化がありましたか。
成毛氏:
AirCampus®上では、一つの課題に対して、受講者がそれぞれの考えをテキストで発信します。さまざまな意見に触れるうちに、経営には一つの正解があるわけではないということを実感するようになりました。
受講者それぞれが、自分なりの考えを持っている。それが分かってくると、周囲がどう考えているか、自分がどう見られるかということを、以前ほど気にしなくなりました。
正解がない中でも、自分なりに考えたことを発信し、行動する。そうすることが重要なのだと考えられるようになったことは、大きな変化だったと思います。
BBT経営塾では、実在する企業の経営課題について、自分がその企業の経営者ならどう判断するかを考える独自のケーススタディ「RTOCS®(Real Time Online Case Study)」に継続的に取り組みます。情報収集、本質的な課題の抽出、解決策の立案までを自ら行うことで、経営者の立場から考え、判断する力を養います。
課長から部長へ。経営が「自分の仕事」になった
――受講前と比べて、仕事や経営課題の見え方は変わりましたか。
成毛氏:
BBT経営塾に入塾した半年後、部長になり、経営層と話す機会も増えました。
自分自身の変化については、経営塾での経験だけではなく、立場が変わったことも大きいと考えています。
その中で見えてきたのは、自社の経営層も、あらかじめ用意された答えに従っているわけではないということです。さまざまな情報やデータをもとに考え、自ら判断し、行動している。そのことを、以前より身近に感じるようになりました。
――課長と部長では、経営に対する向き合い方も変わるのでしょうか。
成毛氏:
課長と部長では、経営に対する感度や責任がかなり変わります。
課長は、現場のリーダーとして非常に重要な役割を担います。一方、部長になると、現場を見ながら上位の視点も持ち、経営として組織をどうしていくのかを考える必要があります。
技術開発本部全体では約400人が所属しています。その中で、自分の部門だけを見るのではなく、本部全体をどのように動かしていくのかまで意識するようになりました。
現在、こうした役割の違いを実感しています。
成毛氏にとって、課長から部長へと役割が広がる時期に、異業種の受講者と経営について議論し、「自分が経営者ならどう判断するか」を考え続ける経験が重なりました。経営を知識として学ぶだけでなく、自分自身が判断するものとして捉える機会になっていったことがうかがえます。
「この技術をどうするか」から「コニカミノルタとしてどうするか」へ
――考え方の変化が、実際の仕事に表れていることはありますか。
成毛氏:
今は、「材料」というコア技術をどうしていくのかを考える立場にいます。例えば何かを提案するときも、以前であれば、この技術をどうするかというところから考えていたと思います。
現在は、それだけではなく、コニカミノルタとしてどうするのかという視点から提案内容を考えるようになっています。このような変化は、自分自身の仕事を見る位置が変わってきたこととも関係していると思います。
――視座が上がったということでしょうか。
成毛氏:
そうだと思います。以前は、技術から物事を見る面が強かった。それが現在は、経営の側から見ることも意識するようになりました。
BBT経営塾では、1年後の到達像として、部門最適を超えて経営の視座から事業を捉えることや、自らの判断軸で意思決定することを掲げています。成毛氏が語る「技術から見る」から「経営の側から見る」への変化は、こうしたプログラムの方向性とも重なります。
「会社をどうするか」を、自分事として判断する
――この1年間を振り返って、ご自身が最も変わったと感じるのはどのような点ですか。
成毛氏:
最も大きいのは、マインドだと思います。行動にも変化はありますが、それには役職が上がり、責任のある立場になったことも影響しています。
その上で変わったと感じるのは、自分で判断するという意識です。今の立場では、自分自身が考え、組織をある方向へ動かしていかなければなりません。
私は技術出身なので、ある技術について、自分の責任で進めていくことは以前から行っていました。
現在は、それに加えて、会社をどうするのかということも自分事として判断し、周囲と一緒に動いていく。それを特別なことではなく、自分の役割として自然に受け止められるようになったことは、大きな変化だと思います。
部長として、自分の考えを組織に伝える
――周囲から、ご自身が変わったと言われることはありますか。
成毛氏:
立場が変わったタイミングでもあるため、経営塾での経験によるものなのか、部長になったことによるものなのか、自分でも明確に分けることはできません。
以前は、ある特定の技術を率いる立場でした。現在は、材料というコア技術全体を見る立場になっています。
部長になったことで、メンバーに自分の考えを伝える機会も増えました。
今年は期初でもあり、新設された部でもあるため、私自身から考え方や仕事に向き合う姿勢について話す場面があります。そうした場で、経営塾で得た考え方を生かすこともあります。
専門性を離れるのではなく、その専門性をより高い位置から見る
――役割が変わった現在、ご自身の専門である「材料」とはどのように向き合っていますか。
成毛氏:
私は、比較的変化を楽しめるタイプだと思います。
材料という分野そのものが好きで、これまでさまざまな仕事に携わってきました。
現在は、自分で手を動かして技術そのものに触れる立場ではなくなってきています。
ただ、これまで材料技術に関わってきた経験があるからこそ、現在のように、より高い位置から材料という分野を見る立場になっても、その仕事を楽しめているのだと思います。
専門人材が経営を担う側へ進むことは、専門性を手放すことではありません。成毛氏の場合は、これまで培ってきた材料の専門性を土台として、その技術を会社や事業の中でどのように生かすのかへと、考える範囲が広がっています。
「材料」から、コニカミノルタの次の成長を考える
――今後、実現したいことはありますか。
成毛氏:
現在はAIが大きく進展していますが、AIがさらに発達した先では、もう一度、現実世界の重要性が高まるのではないかと考えています。
多くのものが仮想空間に移っていったとしても、最終的には現物をどうつくるのかという課題が残ります。
ロボットやフィジカルAIも含め、現実世界で何かを動かしたり、つくったりする必要があります。そのときには、材料の価値が今以上に高まるのではないかと考えています。
仕事という意味では、材料という切り口から、コニカミノルタがさらに飛躍するようなことを実現したい。その核に、自分がこれまで取り組んできた材料があるというのは、一つの思いとしてあります。
さらに、鉄鋼やプラスチックをはじめ、日本には材料分野で培ってきた強みがあります。
AIという領域だけを見れば、今から日本が世界をリードすることは簡単ではないかもしれません。一方で、現実空間を支える材料の領域で、日本企業が再び世界で存在感を示すことができればうれしいと考えています。
経営幹部候補に、次の役割を担う前後でどのような経験を用意するか
人事の戸田氏は、BBT経営塾への派遣にあたり、経営者として必要なマインド、高い視座、戦略思考力、構想力など、社内だけでは得にくい視点や考え方に触れることを期待していました。
その中でも「高い視座」という点では、成毛氏自身が語った「技術から見る」から「経営の側から見る」への変化と重なる部分があります。
その変化が最も具体的に表れているのが、「この技術をどうするか」から「コニカミノルタとしてどうするか」へ、提案を考える起点が広がったことです。
人事部として今回の受講は、課長から部長へ役割が広がる時期に、異業種の受講者と経営について議論し、実在企業の経営課題に対して 自ら判断を重ねる経験をしたことにより、”経営を自分事として捉える”良い機会になったと感じています。
今後は、事業での実践を通し、更なる成長に確実に結びついていくであり、継続した育成支援が重要と認識しております。
専門領域で経験を積んできた人材が、次の経営を担う立場へ移っていくとき、どのような経験を用意するのか。
成毛氏の事例は、経営幹部候補の選抜後に、どのような経験機会を設けるかを考える一つの材料になります。
BBT経営塾について
BBT経営塾は、部長層を中心とする経営幹部候補・次世代リーダーを対象とした1年間のプログラムです。異業種の受講生との議論や、実在企業の経営課題を題材とした学習を通じて、経営視点・判断力・発信力を鍛えます。